補償について
補償について
土地収用法は、正当な補償を前提として、土地の収用を認めていますので、収用委員会の裁決は、補償が重要なテーマとなります。
損失の補償は、原則として金銭で、各人別に行います。次のように「土地に関する補償」と「明渡しに関する補償」に分けられます。補償の基準は、土地収用法88条の2に基づく細目政令により、定められています。
土地に関する補償
- 土地補償
- 借地権などの権利消滅補償
- 残地補償
明渡しに関する補償
- 移転料の補償(建物を移転する費用の補償など)
- 通常受ける損失の補償(引越しに要する費用の補償など)
土地に関する補償
土地補償
収用する土地の対価にあたる補償です。近傍の類似した土地の取引価格などを考慮して算定します。
算定にあたっての基準日は、事業認定の告示日です。補償額は、この基準日時点の土地価格に、裁決の時までの物価変動に応じた修正率を乗じた額となります。
《土地収用法71条》
【ちょっと解説】 都市計画事業の場合
都市計画事業における土地補償の基準日については、事業認可の告示日が事業認定の告示日とみなされます。
ただし、事業に長期間要することから、裁決申請をしないまま1年を経過すると、自動的に1年後のその時点が事業認定の告示日とみなされることになります。事業期間が終了するまでそれが繰り返されます。
《都市計画法71条》
土地の一部が収用されると、残地が生じます。このとき、残地の価格が下がるなど、損失が生じる場合には、元の価格との差額が補償されます。
残地に借地権などの権利がある場合も同様です。
《土地収用法74条》
借地権などの権利消滅補償
収用により、借地権などの所有権以外の権利は消滅します。そのため、その権利に対する額が補償されます。権利の取引価格や契約内容、収益性などを考慮して算定します。
抵当権などの補償は、個別に見積もることが難しいので、通常、土地所有者など担保権を設定している者の補償に含めます。
《土地収用法71条、69条》
残地補償、残借地権補償
土地の一部が収用されると、残地が生じます。このとき、残地の価格が下がるなど、損失が生じる場合には、元の価格との差額が補償されます。
残地に借地権などの権利がある場合も同様です。
《土地収用法74条》
【ちょっと解説】 替地による補償
代替地のような現物により補償することです。金銭補償では替地の取得が難しく、従前の生活が維持できないなど特別の事情がないと、認められません。
《土地収用法82条》
明渡しに関する補償
移転料の補償
収用する土地に建物などの物件がある場合、通常、これを移転するための費用が補償されます。この費用は、客観的かつ合理的に、移転先と移転方法を想定して算定します。次のような補償があります。
《土地収用法77条》
○建物補償
建物を移転するための費用です。移転先(敷地内または敷地外)、移転方法(除却、改造、再築など)を認定の上、算定します。
○工作物補償
塀、門扉など建物以外の物件を移転するための費用です。なお、移転ができない工作物は新設費を基に補償します。
○立竹木補償
庭木などの樹木を移植するための費用です。なお、伐採が相当と認められる場合には、伐採費を補償します。
通常受ける損失の補償
移転料の補償のほか、土地が収用されることにより、通常、損失が発生すると客観的に認められるものが補償されます。主に次のような補償があります。
《土地収用法88条》
○動産移転補償
引越しに要する費用が補償されます。
○借家人補償
建物の賃借人が家主との契約関係を続けることが難しい場合、同種同等の建物を賃借するのに必要な費用などが補償されます。
○営業休止補償
営業を一時休止する必要がある場合、休業期間中の収益減少額などが補償されます。
○仮住居補償
建物の居住者がいる場合、仮住居に必要な費用などが補償されます。
○家賃減収補償
建物の家主が賃貸している建物を移転し、移転期間中賃料を得ることができない場合、賃料などが補償されます。
○移転雑費補償
新たに土地を取得し、建物を移転する場合、移転先の選定に必要な費用などが補償されます。
【ちょっと解説】 損失補償の制限
事業認定後に、建物などを新築、増築した場合、あらかじめ知事の承認を受けていないかぎり、これについて損失の補償を請求することはできません。
《土地収用法89条》